未仕立て品の見極め方

4.緑青(ろくしょう)

着物に使う金彩には「緑青(ろくしょう)」という青緑色の錆を発生させるものがあります。
せっかくの美しい金彩がこの緑青によって台無しになることが多々あり、和装業界では問題の一つになっています。
では少し専門的になりますが、判明している原因をいくつかご紹介しましょう。
数ある金彩材料の中で緑青の出るのは銅であり、亜鉛との合金の真鍮を用いた材料に限ります。緑青は様々な要因が重なって生じるとされ、その要因とは「酸」「アルカリ」「イオウ」「塩分」「湿気」などです。

具体的に主な例をあげてみましょう。


  1. 汗には塩分やアンモニア(アルカリ)が含まれています。
  2. 金彩材料のバインダー
    バインダーとは接着剤のことであり、酸が含まれています。
    しかし通常、銅の合金用には中和剤が混入されていて錆の発生を防いでくれます。
  3. ベンジン用ソープ
    材料の種類によっては、多量のアンモニア(アルカリ性)が含まれているものがあります。

緑青の原因は皆様のご存じないところに潜んでいます。
銅の合金材料全てに酸を中和するバインダーが使用されているという保証はありません。またベンジンによるしみ落としや洗いでは、アンモニアの混入されたベンジン用ソープがその大半をしめており、入念な濯ぎ上げがなされるか否かは作業する者の心一つなのです。
このように皆様の大切なお着物は金彩職人やシミ抜き職人への信頼の元にゆだねられているのです。

緑青は特に金くくり(線)に多く見られ、最初は綺麗な青緑色を帯びてきます。
この段階で発見出来れば、鮮度の高いベンジン洗いで解決するともありますが、金そのものが黒く変色してくれば手遅れとなります。
その場合、金彩加工を落として新たに加工となりお直しに高額な費用を要することとなります。

アンティークものの殆どは金が黒ずんでいますから、皆様は「そのようなもの」と思い、ご覧になってらっしゃるものと思います。しかし未仕立てのもので、既にこのような変色が見られてはお困りになるのではありませんか?
尚、純金の場合はこのような緑青は見られません。また「本金使用」と表示があっても全て純金とは限りません。

金彩をよくご覧になって下さい、緑味を帯びているものは要注意です。