正しい染め替え

古くなった着物を染め替えることはよくあります。退色したものや「年齢と共に色が派手に感じてきた」という場合など。ところが綺麗に染まらなかったために、着ることが出来ないという例もまた多くあります。
では染め替えとはどういうものなのか。またその失敗はどうして起こるのかをお話していきましょう。

浸染と引き染め

染めには、染料で炊きながら染める「浸染」と、張った生地に染料を刷毛で引いていく「引き染め」があります。
浸染は無地にしか染めることができません。柄物を染めるときは引き染めでなければなりません。模様部分には色が付かないよう、模様部分を糊で伏せて地色を引くのです。
さて問題は、着用したものや古い着物類です。これらはなんらかの原因で生地に異変があると考えなければなりません。
例えば、シミ、カビ、スレ傷などがあげられます。つまり色掛けでシミやカビを隠そうとしても、新たな染めムラを起こす危険性を秘めている訳なのです。染料はそういう生地の異変にはとても敏感なのです。
また着用時の摩擦によるスレ傷は引き染めの場合、色溜まりを起こします。この現象は生地の正面からは濃く見え、斜め(生地を鋭角に見る)からは見えないというものです。浸染の場合は正面からは見えず、斜めからは白く毛羽状に見えます。
シミ跡は染料を吸い込む場合と逆にはじく場合があります。このように古物の染め直しは、染め上がってみて初めて分かるというリスクの高いものだということをご理解頂きたいです。

打開策

その中でも二次的染めムラを最小限に止める最善の方法をご紹介いたしましょう。
解き羽縫い(仕立てを解き元の反物状態に縫い合わす)をします。その時に決して湯のしはしないで下さい。これは熱によって汚れが生地に染まり込み、取り返しのつかないことになる危険性があるからです。
続いて水に浸けて「染め下洗い」をします。これはスレを出さないのが第一条件です。
一度スレて毛羽状になったものは直す手立てがないということを忘れないで下さい。
また、ものによっては染める前に色抜きをした方が良い場合もあります。
色抜きによって元色が薄くなった分、薄色や鮮やかな色にも染め直しが出来るということです。

「全体の色掛けによって柄がくすんだから鮮やかにしたい」「柄の色が派手だから地味にしたい」このような場合もまた新たに柄部分の彩色は可能です。
また、落ちてしまった金彩の復元や、シミを隠す意味での金彩加工も可能です。
この段階までくると見違えるほど美しく変わることでしょう。

いずれにしてもこれら全ては私達プロの仕事です。加工を依頼される前に十分に説明を受け、きちんとした打ち合わせをして、見積もりを立ててもらいましょう。
もちろん当社でも、お直し、染め替えなどの加工や制作まで、これらのご相談や見積もりを承っております。
経験がものを言う世界ですので、信頼出来る業者をお選び下さい。