「ガード加工」と呼ばれる撥水加工・撥油加工についての話題を耳にすることがあると思います。
また疑問をお持ちの方も多いでしょう。
当社ではガード加工をオススメしております。
世間では「ガード加工=風合いを損ねる」など、様々なデメリットの話も出ているようです。しかしそれは消費者の皆様の誤解や先入観であることが多いです。
デメリットも確かにありますが、 ガード加工についての正しい知識を身につけることで、不安は解消され、適切な対処の答えが見出せることでしょう。
さらに素敵な着物ライフを楽しんで頂けるために、私どもがそのお手伝いを致します。
ガード加工を依頼するときに下記の注意点に気をつけておけば、トラブルになりにくくなるでしょう。
近年の「ガード加工」と称するものは、主にフッ素系加工材が使用されています。
各メーカーによって風合いや撥水・撥油効果は多少異なると思いますが、共通することを幾つか説明させていただきます。
例えば流れる汗は防げますが、体内から蒸気として発汗されるものは浸透します。
湿気による縮みも防ぐことは出来ません。
汚れは全体的に付きにくく、仮に付いてもシミ落としが容易になることが大きなメリットでしょう。
「ガード加工済みのモノを着用すると暑い」という声をまれに聞きます。
ガード加工は繊維を目詰まりさせません。
水は通しませんが、空気は通りますので、通気性についての問題はありません。
「熱湯」「洗剤」「ジュース類など」「浸透性のよいもの」は完全には防ぎきれません。
特に「赤ワイン」などはご注意下さい。
上記のようなもの(防げないもの参照)が付着した場合は、浸透するまでに速やかに拭き取ることをおすすめします。
※注意点
濡れタオル(おしぼりなど)で擦ることは禁物です。生地や染めが傷み、シミも浸透し直らなくなります。特にスレによる傷は取り返しがつきませんので、くれぐれもご注意下さい。
時間経過による撥水効果の低下はありません。
但しガード液はフッ素樹脂のため、ドライクリーニングを繰り返していけばその効力は次第に落ちていきます。
特にドライクリーニング(丸洗い)の洗剤(界面活性剤)の残留により、ガード効果は著しく落ちます。しかしその場合は「洗い」に問題があるため、再洗いで残留物を除去すればその効果は復活します。
また表面のホコリや汚れの付着でも効力が落ちることはありますが、この場合も洗いとプレスでガード効果は戻ります。
染み落としの際のベンジン洗いや浸透剤でもガード効果は著しく落ちますが、この場合はアイロンなどの加熱でその効果は復活します。
ガード加工済みの商品は私たちプロにとって、しみ抜きの作業がかなり効率的になります。
「ガード加工がかかっていたために落ちない」といったようなデメリットはほとんどありません。ですから、手間もある程度省け、当然消費者の方にとっても洗いやシミ抜きの費用も安く上がるというメリットがあります。
ガード加工済みの着物をシミ抜き依頼した際、「ガード加工がかかっていなければ落ちた」という業者からの回答だったいう声なども時々耳にしますが、そのようなことは決してありません。
但し、それは加工後に付いたシミや汚れに限ります。ガード加工以前のシミはその上からガードで封じ込める結果となりますから、十分にご注意下さい。特に古物に加工する場合は解き洗い張りで水に通すくらいの配慮が必要です。
ガード加工を落とすことは不可能ですが、染色時の温度を上げることや浸透剤により、染め替えは可能です。
色掛けを必要とする補正作業についても同様です。
反物状態と仕立て上がり状態では若干の違いが出ます。
仕立て上がり品では縫い糸も含め、全て加工がかかります。
ところで、各種ガード加工によっては加工時の乾燥工程で縮むことがあります。
仕立て前の地詰め(生地をあらかじめ縮めておく工程)が十分になされていない場合に起こりやすく、その理由として次のようなことがあげられます。
縮みが激しく風合いが変わってしまう生地や、また模様の位置づけや古物の仕立て替えなど、生地の断ち切り寸法と仕立て寸法との兼ね合いで地詰めが制限される場合があるのです。
結果、時間と共にくる縮みが、ガード加工の乾燥で瞬時に出たものだといえます。
このケースの多くは、仕立てやガード加工以前の問題だといえるでしょう。
伸縮性の高い生地には注意が必要です。
これはメーカーや商品によっても多少異なりますし、わずかながら風合が変わるのは事実かも知れません。
著しく風合いを損ねるケースには、柔軟仕上げ剤が施されたものとの複合による現象の場合が多いです。
つまり、柔軟仕上げ加工やガード加工が単独である場合の風合いは差ほど問題がなくても、それらの加工を繰り返すことが風合いに支障をきたす恐れはあります。
聞き慣れない言葉だと思いますが、これは染め上がりの生地が硬い場合の処理方法です。
絹をムラなく綺麗に染めるために、糊状のものを引き、生地を固くする工程が幾度かあります。
生地を染めた後は生地に残る不純物を綺麗に取り除く必要性があります。
この行程は「水元(みずもと)」と呼ばれる作業のことです。
昔はこの作業を川で洗い流していたことから、これを「友禅流し」と呼んでいました。かつての京都では鴨川でその光景をよく見ることが出来ました。
現在では環境上やむなく人工的設備で行われます。そのため以前のように広い川の流水で一気に不純物を十分に取り去ることができなく、生地に固さが残る結果となります。
生地の表面に弾力性が失われ、ごわつくため摩擦で白けたりすることがあります。これを「チョークマーク」と呼びます。
チョークマークとはツメなどで生地をこするとその箇所が白くなる現象のことです。チョークマークは乾燥時のブラッシング、または蒸気を与える事で、一時的に消すことは可能ですが、根本的な解決には至りません。
このチョークマークの原因を回避するには、染めの工程に幾つかの条件があります。
*地入れ:引き染めの際、ムラなく染めるため生地に植物性タンパクを引き、染料の浸透を遅らせる行程。
柔軟仕上げ剤(液柔軟)のデメリットとして特に水ジミの付着があります。
つまり水溶性の柔軟液が水により移動した時に水型が付きやすいのです。特に雨ジミや汗ジミは注意が必要です。
ベンジンで輪ジミになりやすい場合もありますから。ご家庭でシミ落としをされる場合も十分にご注意下さい。
これらの処理については信頼性の高い業者に頼むようにしましょう。このページ書かれていることをきっちり行っているか質問してみるのも良いかもしれません。