地域による違いとその実態
女紋には「全く存在しない地域」や「習慣は存在するが、女紋という名称が使われていない地域」など、全く地域によって全く扱いが違う事も多く、地域性がかなり強いといえる。
このようなことから当社にも、直接お見えになる業者から消費者まで、女紋について多くの質問が寄せられる。
当社ウェブサイトを通したメールや電話。またサイト内に設置している質問掲示板でもこの類の質問が圧倒的上位を占める。
消費者からは、結婚を境に巡る「婚家との習慣の違い」について疑問。
業者からは、紋入れ加工依頼の際、「消費者との認識違い」からくる質問など。
お陰様でこれらの質問から様々な情報を収集することが出来た。さらに当社のネットワークにより出来る限りの情報も集めてみた。紋入れ加工業者から、問屋、小売り店。またインターネットを通じての情報などである。その結果、予想以上に様々な情報を得る事が出来た。
主に女紋が盛んなのは関西を中心とした西日本である。その大半は母系紋が主流となっている。
関東、または東日本には母系紋はほぼ存在しない。女性専用の替え紋の発祥は東日本だとされているが、現在では女紋の存在そのものが極めて少なく意識も薄い。
東日本で女紋と呼ばれているものの中にはアレンジ紋が存在するが、これはあくまでも装飾的効果を目的としたもので、女紋としては代用的なものである。またこれには女紋という名称は存在せず、一つの習慣として根付いている地域もある。つまり女紋とは呼ばないがアレンジ紋の習慣と同じなのだ。
ところが極まれに、関東や東海地方から母系紋の報告を受けることがある。しかし、話を突き詰めていくとやはり何代か前は決まって関西であった。
民族学研究者「近藤雅樹」氏のデータでも
「関東の一部の地域で母系紋の報告があるが、これは関西から嫁いで来た方が持ってきた習慣であり、その地域で継承されてきたものではない。」
となっている。
それを示したのは同氏の著書「おんな紋 ― 血縁のフォークロア」に記された「日本各地の女紋の実態分布図」であり、女紋のその特異な地域性をズバリ表したものである。
その分布図も示す通り、女紋は西日本に集中している。それは瀬戸内海沿岸を中心に広がりを見せ、しかもそのほとんどが母系紋で占めているのだ。
残念ではあるが、分布図のデータはあくまでもアンケート調査による報告データであり、報告のされていない例ももちろんある。それは当社に報告されている例がある事からも明白である。
もしあなたが「私が聞いた女紋と違う」と不安になる事があっても、何も心配はない。何故なら、女紋は地域によってその習慣が違うからだ。
問題のほとんどは話し合いで解決する事が多い。せっかくの結婚といったような幸せを習慣の違いで破談してしまうような事になるのはあまりにも馬鹿馬鹿しいではないか。