色順応2
以前、しみ抜きガンの事で、このような問題があった。
1980年代に入った頃、それまでの黒色であった各種しみ抜きガンがカラーバリエーションが増え、カラフルになり初めた。
新製品で性能は上がったのだが、その色目が鮮やかなため、ガンを構えた瞬間に目がショック状態に陥るのである。しかしそれが和らいだ瞬間からすでに目は色順応を起こしているため、正常な色の識別が困難となってくる。
我々染色補正師はシミを落としながら、と同時に彩色作業も行わなければならない。
しみ抜きガンは当然、目に近づけるため黒やグレーのようなモノトーンが理想なのである。
しかしそれがどういう訳か、新製品は子供のおもちゃのようにカラフルだったのだ。
購入元に訴えたが
「そんな事言うのは森本さんだけや!他の人は皆、色が綺麗になって喜んではりますよ!」
どうやら強調色は新製品を売り込むための手段であったようだ。
家庭用品じゃあるまいし、真剣に訴える私の方がいつも変人扱いされるのである。
お洒落感覚も悪いとはいわないが、この職種についてもっと業者は理解すべきであろう。我々のような繊細な色を扱う職人にとっては、売り手にとっての些細な戦略が命取りに成り得るのだ。
最近はソフトカラーも出てきてはいるが、まだモノトーンは作られてはいない。そのため私は今でも初期のものを愛用している。
作業場で目をニュートラルに使い状態に保つには道具類は無彩色や基調色が望ましい。
画像(数種類のガン、ドライヤー)