色に想ふ 〜森本景一色彩論〜 「配色」

補色対比

「良い色」とよく言うがこれは一体何を示すのであろう。それとは逆に「悪い色」というものは存在するのであろうか。
いずれにしてもこれらは色を心地良く感じるか否かである。
では、ここで少し色から離れて、人にとっての「心地良さ」とは何かについて考えてみよう。

音楽や美術、その他、人が五感で感じる「心地良さ」には共通する何かがあるのではないだろうか。
食べ物で例えれば安らげるおふくろの味。また出会いと感動の新鮮な味。これら全て心地良いものであり、つい欲してしてしまう。
では、この心地良さとはどこから来るのか。
例えば食べ物を美味しく感じて貰う為の一番簡単な方法は、相手のお腹を空かさせる事である。
また、寒い時には暖かい食べ物や環境、暑い時には涼しい食べ物や環境。
タイミングや組み合わせを踏まえて、その人にとって欲っするものが得られた時、つまり欲求を満たした時に人は心地良さを感じるのだろう。
甘い和菓子に抹茶の苦みが美味しく感じる。白いご飯とおかずの関係。食べ物と飲み物。
これらは人が求めるバランス感覚ではないのか。
この生理的現象は色にも当てはまるのではないだろうか。

色相環、これは色立体の水平断面である。

(画像)

色がグラデーション状に変化していくのが分かって頂けるであろう。
人の目は無意識のうちにこれらの色を均等に受け入れようとしている。
つまり目は刺激のある一色を見続けた場合、その片寄った方向を元に戻そうと、反対色を求めようとするのである。
反対色とはこの色相環では向かい合う色同士の事だ。
この関係を「補色の関係」といい、これらを混ぜ合わせると必ず無彩色(ニュートラルグレー)になるのである。
目はニュートラルな状態を保つために無意識に補色を求めているのである。

人々にとって「心地良い配色」とは生理的に「求め合う色」なのかもしれない。