色に想ふ 〜森本景一色彩論〜 「配色」

時間経過の効果

再び食べ物の話だが、一種類の料理を食すのも良いが、タイミングをずらす事により美味しさの効果を上げる場合の方が多いのではないだろうか。
例えば、ディナーのコースや懐石料理。家庭でも好みに合ったそれぞれのタイミングがあるはずだ。それにアルコール類やデザートが加われば尚更の事である。
またその他、音楽や芸能にもこれらに共通した事がいえるのではないだろうか。

さて色の話しに戻すとしよう。
求め合う心地良い配色は同時に視野に入る「同時対比」だけとは限らず、時間経過を経て効果を生み出す場合もある。むしろこの時間の経過による余韻が生み出す配色の効果が、より引き立たせる事が出来、全体のバランスを調和する重要な鍵を握っているのであろう。
一般的な例として、色彩効果を狙ったステージや映像、また出版物など。色彩がドラマチックに展開され楽しいものである。

時間経過で効果を上げる配色は、人々の意識下に無い場合がほとんどである。
美しい色だと感じた時、その色とは別の色を無意識下に見ている。それは美しいと感じる色をより引き立てる為の色を求め、見ていたのであろう。
それが基調色、強調色の関係か、または補色の関係なのか。補色といっても時間経過の場合、何色かの段階を経て辿り着く場合が多いため、配色分類は変わってくる。
これらは時間経過の余韻として頭に記憶された色が配色としての効果を生むのだ。つまり現在の色と過去の色の配色なのだ。

このパターンも絶妙なタイミングのずれや、瞬間的な短い時間のずれから長い時間のずれまで、幅の広いものとなる。
本をめくる位のタイミングから、季節の変化、さらにはその時代。季節の移り変わりによる自然色の変化は実に美しいものである。身に付ける色も季節に相まってこれも楽しい。
もっと長くなると、生涯をかけての時間差まで上げられる。

「子供の頃から味覚が変わった」と同様、色の好みも変わって行くのであろう。
これらには我々が知り得ないような、メカニズムが働いているのかも知れない。