色に想ふ 〜森本景一色彩論〜 「私と色」

家庭での出来事

小学校に入った時、祖父にワインレッドの自転車を買ってもらった。そして数年後、その自転車妹に譲る事になった。
学校から帰ってきた私は少しでも綺麗にしようと妹と相談した上で、何処で手に入れたかまでは覚えていないが、このメタリックカラーを焦げ茶色と朱色のツートンに塗り替えたのである。

しかしその夜仕事から帰ってきた父にこっぴどく叱られてしまった。
色彩感覚のあるお前が何て事をするんや!綺麗な水色やクリーム色やったら分かるけど!
確かに言われてみればそうだと思った。
おまけに刷毛塗りだったため誰の目にも綺麗だとは思えない。

では塗っている時のあのワクワク感は何だったんだろう、父に褒めてもらえる事だろうと妹と共に信じていたのに。
それはきっと色が変化して行く様に私達はときめいていたのであろう。
ちょうど木の葉が紅葉して行くように。