色に想ふ 〜森本景一色彩論〜 「配色」

基調色と強調色3

「強調色=鮮やかな色」、「基調色=地味な色」と思いがちだが、実は異なる場合もある。
その時々によって違う訳だが、大きく違うのはその比率である。
微妙なバランスや絶妙なバランス。差が大きすぎても小さすぎてもいけない。
美しく見せるためにはそのバランス感覚が命となってくる。
強調色の効果はあくまでも目に映る効果であるため、視野内の分量(バランス)が大切なのである。

視覚効果を上げる素晴らしいステージ衣裳も、近くで見ると、ただ目を刺す派手な色調の場合が比較的多い。
私達が作る着物。どんなに華やかな振り袖であれ、一度に数多く見せられると、その効果は落ちる(同化現象)。むしろその中に一点の無地のモノがあれば逆に目を引く場合もある。
私の制作する大宮華紋もこの効果を狙ったもので、無地の着物に華やかな彩色を施した家紋が見る者の目を引く。

例えば、美術館。一つ一つの作品(例えば絵画)をじっくり見ると、その作品の強調色が何で基調色が何か、なども見えてくる。
しかし距離を離れて見てみると、そこには絵の描かれたキャンバスと額が羅列されているだけの光景に見える。
壁は白やベージュなどの色であろう。この場合、壁が基調色となり、絵画は強調色となるわけだが、強調色が多すぎると視覚も混乱してしまう。
幸い美術館は作品と作品の間を設けているためにこのような事は少ない。美術館側のセンス次第で作品達が生きるか死ぬかがまでもが決まってくる。この場合、大事なのは距離と間隔。これも強調色と基調色のバランスの関係が関わってきているのだ。

物事の全てはそれに相応しいバランスが存在する。色の世界だけでなく、人間関係、食事、自然、さらには原子や分子に至るまで。
森羅万象の全ては絶妙なバランスによって成り立っているのである。