はじめに
「好きな色は。」
「好きな色はありません。好きな配色ならあります。」
「それでは、どんな配色ですか。」
「それはその時の心境によって変わっていきます。」
普通日常生活における色の識別や判断は、単色でなく複数の色の組み合わせの中で評価されていると思います。
従って美しさとは、配色の美しさということになります。
一つの色でも、それぞれの配色によってその表情は変わり、また見る人のその時の心境によっても、捉え方が違ってきます。
人々が見過ごしたり、嫌ったりするそんな「色たち」を、美しく演出していきたく思います。
上記の会話は私が二十歳代の頃、ファッションデザイナーである友人と交わしたものである。そしてその後、文章を付け加え、色帳監修初版の前書き文となった。その考えの基盤は今でも変わっていない。
私の色に対しての捉え方は3つに分けられる。
- 1つ目
個人的嗜好。私にも好きな色彩はあるが、それは時代や時によって訴えたい色彩が変わって行く。 - 2つ目
染色補正師としての捉え方。これは補正作業として「この色に復元する」という答えを出す事にある。それは答えに向かって、補う色目と分量を的確に出さなければならない。つまり色の足し算、引き算が求められる職人技。 - 3つ目
「大宮華紋」や「色想きもの」、その他の作品や商品など、ものつくりの依頼にも答えなければならない。これには相手を満足させるという、アーティスト的な要素も必要。
このように日々、色との関わりの中で私は楽しみ、また苦しんでいるのである。
さて、こんな至らぬ私ではあるが、ここ辺りで私なりの色の話をしてみる事にした。思い立った事から書こうと思う、さてどのような話になるだろうか。