しみ抜き講座7 「摩擦による生地への損傷」

スレに注意を!
当サイト及び当社ではスレと毛羽立ちとは別の意味で解説しています。

生地が水分を含んだ状態で起こる

  • スレ
    摩擦が原因で起こる生地の損傷で、生地が濡れた状態で起きる現象です。
    絹は水を吸いやすい性質を持ち、水を含むとふやける(膨潤)性質があります。
    この状態では生地の表面が傷つきやすくなります。その状態の時に摩擦をすると表面が削れ、その切れた繊維が起きてきます。
    これがいわゆるスレです。
    繊維が削れる、または切れるなどといった物理的損傷であるので、物理的に直すことは不可能です。 (ミクロン単位の繊維をつなぎ合わせるのは不可能)
    見た目は光の乱反射によって斜めから見ると白っぽく見えるのが特徴です。
    専門家である我々染色補正業の作業工程に「スレ直し」という作業がありますが、様々な技術を用いて切れて起きあがった状態を寝かしたり色付けをして、乱反射による白けを一時的に見えにくくするのです。従って完全に直ることはありません。
    あくまで見えにくくする事ぐらいしか出来ないのです。
    一般的には毛羽立ちとも言いますが、本来の毛羽立ちとは生地の乾燥状態で起こる損傷の事です。スレの場合、「毛羽状」と言った方が相応しいでしょう。
    ◇光の乱反射などにより斜めからは白っぽく見える。
織物に発生したスレ
織物に発生したスレ
スレの拡大(1000倍)
スレの拡大(1000倍)

※参考写真:京都市染織試験場資料より引用(許可済み)

生地が乾燥状態で起こる

  • ヘタリ
    乾燥状態で摩擦や圧力がかかった場合、生地の表面が押された状態になる。
    ◇スレとは症状が逆で正面から見ると白っぽく、斜めからは濃く見える。
  • チョークマーク
    生地に残った不純物が生地を硬くし、表面の弾力性も悪くする。
    その為、ほんのわずかな摩擦でもチョークで描いたような症状を残す。
    ◇ヘタリと同じように正面から白っぽく見える。
  • 毛羽立ち
    乾燥状態での摩擦が原因で起こる生地の損傷です。
    摩擦で繊維が縦に裂け、セリシン中にある分離繊維が表面に現れた現象です。
    毛玉(ピリング)の原因にもなります。
    ◇生地の表面にほこりが付いたように白っぽく見える。
絹糸に発生した毛羽
絹糸に発生した毛羽
糸で発生した毛羽を織り込んだ状態
糸で発生した毛羽を織り込んだ状態

※参考写真:京都市染織試験場資料より引用(許可済み)

補正の種類

  • スレ直し
    スレと毛羽立ちは繊維が削れたりはがれたりという生地の損傷ですから、物理的に直すことは不可能です。
    「スレ直し」という名の作業工程はありますが、助剤や染料で乱反射を一時的に見えにくくする事しか出来ないのです。
  • ヘタリ直し
    生地に水分を含ませたり、熱を与える事で直ることが多い。
  • チョークマーク直し
    水分を含ませたり、乾燥させて全体を白けさせる、などすれば一時的には消えますがこれは解決策ではありません。
    生地を根本的に柔らかくする柔軟加工機による柔軟加工が必要になってきます。
    地染め(引き染め)をする前にスレ(削り起きた状態)た生地を引き染めした場合、その部分は斜めから見えにくく、正面からでは濃く見えてきます。
    この症状では解決策はほとんどありません。

着用後の引き染めの場合、この危険性はかなり高いです。
浸染 の場合はスレの症状として残ります。


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