実家の紋
既婚女性の生家の紋章のことであり、家の大黒柱である父から受け継いだ家紋が女紋として一時的に役割が変わってしまう。
この父譲りの家紋を結婚時に持参した場合、婚家側からは「嫁の紋」などと呼ばれる事が多く、その扱いは「女紋」と同じである。
しかし本人からしてみれば「実家の紋を持ってきた」ということになる。
つまり、嫁が実家から持参して来た家紋が男紋であっても婚家から見れば「家紋以外に、嫁だけが使う紋」ということになる。この場合の「女紋」とは婚家側から見た言い方なのである。
では父系継承である紋章を分類してみよう。
実家の紋には家を代表とする「定紋」と非公式に用いる「替え紋」がある。これらはいずれも男紋だが、男女共有も可能。そして女性専用の替え紋やアレンジ紋がある。これらの「女紋」はその家に伝わる父系継承のものであり、母の紋ではない。
しかし、生家からの女紋を持参する場合や、また結婚を境に男紋を女紋に役割を変える場合もあり得る訳であり、その場合は最初から女紋を持って嫁ぐ事になる。
継承について
結婚時に持参してきた実家の紋は婚家の紋章に変わるまでの一時的な事が多く、その後は継承される事が少ない。
実家の紋の成り立ち
女性が家紋を使い始めたのは元禄以降だとされている。
それは武家が娘を嫁がす時、嫁入り道具一式に実家の紋を付けて持ってやらせたことにあるという。そして後にこの習慣は民衆へ広まっていったようである。
この頃、家紋は名字を代行するものであり、女性専用の紋章といったようなものはなかった。ところが持参した実家の家紋が嫁ぎ先では嫁の紋として位置づけられるのである。
当時、女紋とは称されていなかったが、実家の紋の付いた嫁入り道具は婚家で調達されるものとの区別を目的としたものであった。
実家の紋の具体例
E家へ嫁いだDさんは実家で使っていた家紋「丸に片喰(まるにかたばみ)」を持参した。E家(婚家)には女紋は無く、全てが家紋の「橘(たちばな)」である。結婚後作る着物などにはE家の橘を入れていくが、実家から持参したもの全てには丸に片喰が施されている。この持参した家紋(男紋)である丸に片喰は婚家では嫁の紋と呼ばれ、女紋として扱われる。
丸に片喰 |
橘 |