継承についての補足
これまでに紹介させて頂いた継承経路はあくまで基本的なものであるが、その家の事情により変化する可能性は十分にあり得る。
例外として何通りかご紹介しよう。
母系紋の場合、女子が途絶え、仮に嫁へ譲ることになれば姑紋に変わる。つまり姑から嫁へ譲り渡す事により、その家の替え紋として扱いが変わるのである。しかし嫁が再び、娘、孫娘へ伝えれば、それはまた新たな母系紋となる。
また、嫁が持ってきた実家の紋や母護りの紋(母系紋)が婚家の女紋として定着する可能性も十分にあり得る。
継承とは無縁の通紋や私紋なども、娘に継承されれば母系紋として役割が変わる。また、その家に定着すれば替え紋にもなる。さらに確率は低いだろうが、家紋(定紋)として定着することも否定は出来ない。
このように継承はその「家」の事情や習慣によって複雑に絡み合い、新たに変化していく可能性を秘めているのである。
余談だが医学では母系体質遺伝が「垂直遺伝」であるに対し、民族学では家紋(男紋)が「垂直継承」で母系紋が「斜線継承」となる。
面白いことに生物学と男性社会が生んだ文化とでは捉え方が逆なのである。