女紋 -おんなもん-

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通紋

数が圧倒的に多く、女紋の代表ともいえるだろう。しかし便宜上での使用目的代用的要素が強い事も通紋の特色といえる。この通紋は「五三ノ桐、蔦、揚羽蝶」等が使用される事が比較的に多い。

五三の桐

五三の桐桐が皇室や上流階級に使われていたことから「ステータス」や「出世」「縁起が良い」などを理由に人気が高かった。また皇室の替紋の「五七ノ桐」を真似て普及したと思われる。花をそれぞれに二枚ずつ減らしたという配慮が庶民らしくて何とも愉快である。

蔦蔦は絡みついて繁殖することから、水商売や人気商売に持て囃された。
また嫁ぐ娘の幸せを繁殖力のある蔦に因んで持たせたとされている。
現在でも北陸、東北地方に多い。

揚羽蝶

揚羽蝶蝶は形の優美さから文様としても多く愛されてきた。
また結婚により境遇が一変する憧れを、蝶自体の持つ変化に重ね合わせていたのかも知れない。

通紋の成り立ち

これらは女性なら誰でも使えるとされている。その普及率もかなり高い。
この膨大な通紋の普及や定着の影には呉服関連業者や職人達が深く関与していたのであろう。

通紋で代表される五三ノ桐。これら販売促進のキャッチフレーズや売り文句は少々首を傾げるものばかりなのである。
例を挙げると、

「貸し借りが出来る」
「他人にも譲れる」
「嫁いでもこの紋だと何処でも通用する」
「帰ること(離婚など)があっても大丈夫」

消費者に対してこれらの売り文句を紋付き販売の企画とし、新たな習慣として通紋の普及や定着に影響した。これは女紋として人気が高かった「五三ノ桐」などを業者が「通紋化」させることによって流通させたのだという。
呉服業界では既製品のことを「仕入れ品」と呼び、「誂え品(あつらえひん)」と区別している。大量生産が行われていた時代の喪服に五三の桐などを予め商品に加工して、既製品として販売されていた。
これらの紋章は業者間で「仕入れ紋(しいれもん)」と呼ばれた。
その大まかな割合は「五三ノ桐(80%)」「蔦(15%)」「揚羽蝶(5%)」であった。(1970年頃のデータ)
しかしそれとは裏腹にせっかくご先祖から継承されてきた「五三ノ桐」を他の紋に変えてしまう例もある。

「貸衣装に間違えられそうだ」
「借り物だと思われる」
「既製品と間違えられる」
「安けなく見える」
「個性が無い」
「紋の無い家系だと思われる」

などを理由に、家紋を重んじる人達から通紋は軽視されている傾向にあるのだ。普及し過ぎたばかりに素晴らしいデザインがこのように思われるのは悲しい話である。

この通紋は日本紋章学によると
「どのような紋章でも、すべての紋章は名字もしくは称号の目印として用いられたものであるから、名字の数が多く、紋章の数が少ないために、どんな紋章でも、一つの名字で独占することが滅多になかった。その中でも、最も多く用いられて、出身の如何にかかわらず、各姓氏に共通に用いられた紋章がある。これを通紋という。例えば、花・菱・蔦などの紋章である。俗に、これはムダの紋とかタダの紋と呼ばれていた。この種の紋章が多く用いられた理由は、紋章の形状が優美で、しかも描きやすいためであろう」(日本紋章学 沼田頼輔著より引用)

前述しているように、通紋は現代は「女性専用」で女紋の代名詞ともいえるほどのものではあるが、江戸時代の頃から「男紋」として存在していたのだという。

通紋の具体例

Jさんの家の家紋は「丸に木瓜(まるにもっこう)」。まだ結婚が決まらない孫娘のために祖母が婚礼呉服一式を揃えたという。ところがそれら全てに、呉服屋の薦めのまま五三ノ桐を施してしまった。

丸に木瓜
丸に木瓜
五三ノ桐
五三ノ桐